ベック先生の認知療法 と パキスタンのウイメンズヘルス  

認知療法 (1)


もうすく10月です。10/10は、あまり知られていないかもしれませんが、世界精神保健デーWorld Mental Health Day と定められ、世界精神保健連盟WFMHが中心となって、メンタルヘルスについての意識啓発と偏見をなくすための活動が行われています。

さて、うつ病などのメンタルヘルスには、認知療法がかかせません。これは、ベック先生という精神科医が創始した認知行動療法に含まれる心理療法の1つです。認知療法では、不適応やうつ病およびノイローゼなどについて、以下のようなモデルが設定されています。

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ネガティブなライフイベント  体系的な推論の誤り

           ↓   ↓

スキーマ → → → 自動思考  不適応やうつや不安などの症状 

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ちょっと擁護の解説をします。

スキーマ: スキーマとは人が外的な刺激を受けたとき、その外的刺激をどうとらえるかという枠組みのことです。同じ刺激を受けても、人によってそのとらえ方は違います。その違いをもたらす元になる、それぞれの人の外的刺激の評価基準をスキーマとよんでいます。

体系的な推論の誤り: これは不適応を示す人に特有の推論の仕方であるとされています。具体的には、以下のような種類があるとされています。これらの偏った推論の影響を受けて、不適応やうつや不安などの症状を引き起こす自動思考が生じるとされています。

1)恣意的な推論  根拠もないのに自分に不利な結論を出す。
2)選択的な抽象化 ちょっとした小さな失敗をしても、完全な失敗だと考える。
3)迷信的思考 何か悪いことが一度自分に起こると、何度も繰り返して起こると考える。
4)過度の一般化 たった一つでも良くないことがあると、世の中すべてそうだと考える。
5)誇張と矮小化 自分の失敗や短所は過大に考え、自分の成功や長所は過小評価する。
6)すべし思考  「・・・でなければならない」と考える傾向。
個人化 自分に関係ないとわかっていることでも、自分に関係づけて考える。
7)絶対的で二者択一的思考 物事は完璧か悲惨かのどちらかしかないといったぐあいに極端に考える。


(写真は、ベック先生。ベンシルバニア大学の教授で、国際認知療法学会(The International Association for Cognitive Psychotherapy)の名誉会長であり、フィラデルフィアにてベック研究所(Beck Institute for Cognitive Therapy and Research)を主宰しています。)
http://www.beckinstitute.org/





認知療法 (2)  パキスタンでのウイメンズヘルス


出産前後(医学用語で、周産期といいます)のうつ病の発症率はもともと高く、障害を引き起こしたり幼児の発達障害の原因となりうるため、その治療は公衆衛生学上の優先課題です。イギリスLiverpool大学地域コミュニティ行動科学科のAtif Rahman氏が、Lancet誌2008年9月13日号で報告した論文です。

うつ病は病気の第4位であり大変重要です。年間の約12%が患者として世界的にみとめられます。日本のような精神科への受診が容易になってきた高所得国にたいして、低所得国ではどうでしょう。

パキスタンの人口の33%、全体の平均有病率があるといわれます。男性より女性におおく、なかでも周産期は大きなリスクです。
この研究の結果は、出生前にうつ病の女性の認知療法をすることで、うつ病の割合を半減することを示しています。乳幼児の成長指数への影響は、介入群では医学的に差があるとはいいきれませんでしたが、下痢が少なくかったとか、乳幼児の予防接種率が高くなったなどの利点があったのです。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2603063/



認知療法 (3)絶対的で二者択一的思考


認知療法のメモにかいた全部を解説するとながくなるので、ひとつ選んでみます。『絶対的で二者択一的思考』というものです

これは、早い話が、白黒をつける考え方というものです。それが極端になって、物事は完璧か悲惨かのどちらかしかないといったぐあいに極端に考えることです。

よくできる生徒で、百点をとれば成功、とれなかったときは完全な失敗と考えている生徒はいませんか。また、スポーツの強い生徒で、試合で勝てば成功、負ければ完全な失敗と考えている生徒を見たことはありませんか。これらの生徒は、「絶対的で二者択一的思考」をしているため、感情の起伏が必要以上に大きくなります。

このような考え方には、そこそこうまくいったというような中間的な判断がないことになります。しかし、完璧にいいとか完璧に悪いなどというように白黒の二分法的な思考で世の中のすべてのことが割り切れるものではなく、中間的なグレイゾーンの多いのが現実でしょう。そのため、「絶対的で二者択一的思考」は現実にあわず、不適応を起こしやすい推論の誤りということになるのです。


認知療法 (4)絶対的で二者択一的思考は、老化する


精神医学者の和田秀樹先生の本に、『がまん』するから老化する という目につく見出しの本があります。彼はこの本でこんなことを主張しています。

人は感情から老化する
人間の老化は、「知力」「体力」より、まず「感情」から始まる。記憶力の衰えを気にする人は多いが、知能・知性は高齢になってもさほど衰えないことがわかっているし、正常歩行能力なども思っている以上に、維持される。それよりも問題なのか、怒り出したらずっと怒っているといった、感情のコントロールや切り替えができなくなったり、自発性や意欲が減退していく「感情の老化」だ。脳の中でも、記憶を司る「海馬」などよりも、人間的な感情を司る「前頭葉」から、真っ先に縮み始めることがわかっている。これを放っておくと、体も脳も見た目も、すべてが加速度的に老化してしまう。(書評から)

中高年以降、もっとも怖いうつ病にどう対処するか
2つの重大なことを指摘しています。ひとつは、うつ病への関与が確実になっているセロトニンの不足や枯渇をさけることであるとしています。脳のセロトニンを増やすようにこころがけるべきである。
ちなみに、セロトニンがふえる食べ物ですが、僕は納豆を推薦しますよ。

もう一つは、二分思考である。ものごとを、オールオアナッシングで考える人や、白黒をはっきりつけたがるひとは、うつになりやすい。仕事上で、『彼は完全な敵だ、味方だ』と固く信じていたり、柔軟性のない思考パターンは、うつを引き起こす危険があるのです。
いま流行の『やられたら、やりかえす』と敵味方を分別するものの考え方を持続していくことは、うつになりやすいと僕はおもいます。







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