女性泌尿器科専門のクリニック

水泳中の突然死

1.    競技中の水泳の突然死

溺水事故のほとんどは入浴時の不慮の事故や、海への転落事故がほとんどです。しかし、最近は、スポーツ中の溺水事故がしばしばみられるようになしました。トライアスロンなどオープンウォータースイム競技これらの競技中の事故は、通常の溺水事故とは異なっています。


2. 競技中の水泳事故がおこる3つの要因

競技中は、通常の水難事故とはことなり3つの要因を考えます
(1)気象条件。(トライアスロンは河川・湖沼・海など自然の中で行われる競技であるから、当然気象条件に大きな影響を受ける。水温、風、波、流れなど)
(2)個人の健康状態。(基礎疾患の有無、泳力、体調など)
(3)主催者側の条件。(コース設定、監視・救助体制)

3. 気象条件による事故

身体(特に頭頸部)を冷水に浸した際には、迷走神経の緊張を介し、極度の徐脈や重症不整脈を生ずることがあり、immersion syndrome とよばれ、水中における意識消失の原因となります。

4. 個人の条件による事故

競技中に持病の発作を起こす可能性があります。ぜんそくやてんかんのある人が その発作を起こして意識を失ったりする場合があります。虚血性心疾患の発症や肥大型心筋症、冠動脈走行異常、不整脈、などが、が競技中に出る場合もあります。これらは陸上では止まって休むことで回復可能な場合もあるでしょうが、水中ではこれらに引き続いて溺水による窒息を起こしてしまいます。とくに要注意なのが、40代、50代の男性です。

とくに注意してほしいのは、不整脈です。
不整脈は、朝おこることがおおいです。そのため、朝から寒い水にはいるトライアスロンは、危険です。虚血性心疾患の発症や肥大型心筋症、冠動脈走行異常、不整脈などが、でたら、トライアスロンをやめて、ほかのスポーツをすすめたい。たとえば、マラソンとか、トレッキングです。

特徴的なのが、トライアスロンのスタート時点から350mとか400m前後のときに、意識障害がおこることです。700mだけのスイムでもあなどれないのです。

そして、アルコールを前日にのむことは、大変危険です
試合の前日にねむれないから、アルコールをのむのは、よくありません


風邪でのどがはれている場合も要注意です
ウイルス性咽頭痛のつよい風邪が、流行している場合があります。のどがはれると、呼吸がいつものようにできません。水泳は大変危険になります。

薬物の副作用のでる時期も考えて!
アスリートはドーピング検査があるので薬物を使用はしませんが、われわれ楽しみでしている一般の参加者は、その意識が希薄で、ついつい試合前に薬物をつかうことがあります

これは、薬物が血液の中にいつまであるかをしめしたものです
薬物は、肝臓と腎臓で分解されたり排泄されたりします
それまでは、体内にとどまるのです
高齢者の場合と、そうでない場合について書いております
このグラフでわかるように、肝臓や腎臓の機能が低下してくる高齢者の方が、薬物がからだにのこることがわかりますね。
お薬をやめても数日の間、副作用の時期があるのです。

薬物の効果は、しばらくのこる!
この変化は、薬物それぞれによってことなりますので、ここでは、睡眠導入剤について説明します。

これは、トリアゾラム(商品名ハルシオン)という薬について、その血液にいつまでのこっているかをかいたものです。
ハルシオンは、作用時間は約2時間の超短期作用型の睡眠薬とされますが、体の中から完全になくなるには、これだけの時間が必要なのです。そのため、大会の前に服用した場合は、8時間まで体にのこっていることを理解してください

ほかの薬もそうです。前立腺肥大症の薬に、アルファー遮断薬というのがあり、一般的です。(商品名は、ハルナールD,フリバス、エブランチルなどです)これらは、起立性低血圧という副作用をおこすことがあります。ですから、前日ののむのをやめたから大丈夫とはかんがえないで、スタートするときに、立ちくらみがあれば薬の副作用がまだのこっているとおもってください。


5.  入水前の過換気の影響

呼吸中枢は動脈血中炭酸ガス濃度 PaCO2 の低下によりコントロールされています。医学的には、呼吸をたくさんすることを、過換気といいます。この呼吸をすると、手足のしびれがおこり、自律神経の障害がでます。過換気を行い PaCO2 を低下させた状態では、息こらえを長時間持続することが可能となり、潜水をする選手がよくしますが、水泳では危険です。呼吸促迫感のないまま運動による酸素消費が亢進し、手足のしびれだけdなく、低酸素血症から意識消失になります。

過換気はしてはいけません。クロールなら、左右両方で呼吸できるようにすることや、首をあげて呼吸ができる技術をみにつけてください。日ごろのスポーツクラブでの練習に取り入れるべきです。

血圧の測定、心拍数の測定は、練習をしてください。首で心拍数をはかり、そして、スポーツクラブの血圧・心拍数計で測定し、ただしいかどうか調べてください。

6. 錐体内出血による急性平衡失調

これは脳出血のひとつです。呼吸のタイミングを誤るなどので、耳管の中に水が入ることによって、水の栓ができ、 それに引き続いて起こる水の嚥下運動などにより、水の栓がピストン運動を起こします。外耳からの水圧などの影響を受けて、鼓室内圧の急変が生じ、鼓室と連続して腔をつくる錐体内にて、毛細血管が破綻して錐体内出血を起こすものと推定されています。平衡感覚をうしなうだけでなく、意識をうしないます。

これには、鼻くうや、耳管の問題があるので、以下の場合は、参加することをやめるべきです。
(1)かぜ気味の場合(鼻腔、耳管、咽喉頭、気道の粘膜に炎症があると耳管から鼓室に水が入りやすい)
(2)耳鼻咽喉科に疾患
(3)飲酒酩酊時(酩酊時には神経系統の総合的反応鈍麻があり、耳管から水が入りやすいし、また急性循環不全を生じやすい)

対策として、日ごろからプールで練習をしますが、
水泳中は口から吸気し、鼻から呼気を出すように呼吸すること(鼻から水を吸い上げると耳管から鼓室に水が入りやすく、錐体内出血を起こす危険がある)

また、当日の対策として、次のことを考えることができます
外耳道に耳栓をするより鼻栓のほうが有効である(鼓膜があるから外耳道から水は中耳に入らないので耳栓の必要はない。鼻から吸った水が耳管から鼓室に入り、錐体内出血を起こす危険がある)
鼻口部より誤って水を吸い、気分が悪くなった場合は、直ちに水泳を中止し、水から出ること。
レスキューのそばで、およぐようにすること。(クロールとブレストを交互にしておよぐことで、レスキュー監視員の位置を把握します。レスキュー監視員に声をかけながら、泳ぐのを僕はしてみました。

7. その他の外因による事故とその対策

(トライアスロンは、水泳のときの怪我がもっともおおい: 写真・筆者)

水泳競技は最初の種目であり、出場人数やコース設定によってはスタート時に混雑のためにバトルが起こることがたびたびあります。最初のコーナーとゴールもです。潮の流れで、コースからはずれる場合もあります。コースロープにそって泳ぐのがとても大切です。そして、係員の指示にしたがってコースを聞きながらおよぎます。


7. アメリカ疾病対策委員会(CDC)より

つぎに、CDCから水泳についてどのような啓蒙活動がされているかとりあげます。

(CDCから抜粋)
水泳は、米国で最も人気のあるスポーツ活動の一つです
。水泳は、プールやその他のレクリエーションウォーター会場でも病原菌に感染することも、怪我がおきることもあるのです。



水によっておこる病気は、霧やエアロゾルまたはプール、ホットタブ/スパ、ウォータープレイエリア、インタラクティブな噴水、湖、河川、または海を泳いで汚染された水との接触・呼吸・嚥下によって広がる細菌感染があります。薬品の化学物質によって引き起こされる場合もあります。

溺死は1-4歳の子どもの傷害による死亡の主要な原因です。米国では、毎日10人が溺死で死亡しています。それらの10の2は15歳未満の子供なのです。救急車で救急病院へ搬送されても、頻繁に記憶障害、学習障害、または基本的な機能の永久的な損失(たとえば、永続的な植物状態)などの脳の損傷が発生します。

溺れないようにするには:
みなさん(成人および小児)に泳ぐ方法を知っておく必要があり、
介護者はCPRを知っている必要があります
すべての水泳の不得意な人は救命胴衣を使用する必要があります、
裏庭のプールは、自己閉鎖とセルフラッチゲートとフェンスで家や庭から分離する必要があります。

水の感染症を予防するには:
あなたが入るプールはみんなで泳いでいることをわすれないようにすることです。塩素が瞬時に細菌を殺すことはありませんから、下痢になっているときにプールに入ると細菌がひろがります。もちろん、細菌は、浄化装置により、数分から数日で取り除くことができます。胃腸、皮膚、耳、呼吸器、眼、神経、および創傷感染症など感染症の様々なが含まれています。クリプトスポリジウム)、ジアルジア赤痢菌ノロウイルスE. 大腸菌 O157:H7といった細菌です。



べてのスイマーのための3つのステップ

  1. あなたが下痢をしているときに泳ぐことはありません。
  2. プールの水を飲み込まないでください。
  3. 良好な衛生を実践する。水泳の前に石鹸とシャワー、トイレまたは変更おむつを使用した後、手を洗ってください。



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奥井識仁のコラム

奥井 識仁

  • 外科医。医学博士
  • 日本医師会・健康スポーツ医単位修得
  • ダイバーズドクター

水泳・マラソン・筋トレーンングがんばっているよ。

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