アナフィラキシー:山登りやトレイルランで蜂に刺される場合を想定して覚えておこう!

意外と知られていないアナフィラキシーのこと。特徴とリスク、症状や原因をくわしく解説します。
アナフィラキシーは命にかかわることも
アフナフィラキシーは、発症後、極めて短い時間のうちに全身性にアレルギー症状が出る反応です。
きっかけは?
主にアレルゲンを食べる(飲む)、吸い込む
体のどこにあらわれるのか?
全身性に複数の臓器(皮膚、粘膜、呼吸器、消化器、循環器など)にあらわれる
このアナフィラキシーによって、血圧の低下や意識障害などを引き起こし、場合によっては生命を脅かす危険な状態になることもあります。この生命に危険な状態をアナフィラキシーショックといいます。

日本におけるアナフィラキシーによる死亡者数 2011
年間死亡者数(人) 71
蜂毒関係 16
食物 5
薬物 32
血清 0

症状が出るまでの時間は、アレルゲンによってことなります
アナフィラキシーの特徴のひとつは、短時間で症状があらわれること。症状が出るまでの時間は、アレルゲンや患者さんによって差があります。
薬物や蜂毒は直接体内に入るため、早く症状が出る傾向があります。これに対し、食べ物は胃や腸で消化され吸収されるまでに時間がかかるため、症状が出るまで薬物や蜂毒よりは時間がかかることが多いです。アナフィラキシーが原因で心停止に至った例の、心停止までの平均時間は、薬物で5分、蜂毒が15分、食物では30分といわれます(アナフィラキシーがすべて心停止に至るわけではありません)。
また、アナフィラキシーは、一度おさまった症状が再びあらわれることもあります※。「おさまったから大丈夫」と安心はせず、すぐに病院で診断を受けることが大切です。



アレルゲンによる心停止発現までの時間(中央値)[海外データ]
薬物  5分
蜂毒  15分
食物  30分


複数の症状がみられたら「アナフィラキシー」かもしれません
アナフィラキシーの症状はさまざまです。もっとも多いのは、じんましん、赤み、かゆみなどの「皮膚の症状」。次にくしゃみ、せき、ぜいぜい、息苦しさなどの「呼吸器の症状」と、目のかゆみやむくみ、くちびるの腫れなどの「粘膜の症状」が多いです。そして腹痛や嘔吐などの「消化器の症状」、さらには、血圧低下など「循環器の症状」もみられます。これらの症状が複数の臓器にわたり全身性に急速にあらわれるのが、アナフィラキシーの特徴です。
特に、急激な血圧低下で意識を失うなどの「ショック症状」も1割程みられ、これはとても危険な状態です。


原因は日常生活のさまざまなシーンに
アナフィラキシーの原因は食べ物がもっとも多く、続いて蜂などの昆虫、薬物となっています。
食べ物
鶏卵、牛乳、小麦、そば、ピーナッツなど、特定の食べ物を食べたときに起こります。子どもから大人まで幅広い世代でみられますが、特に乳幼児に多くみられます。
また、食べただけでは症状が出ないのに、食べて4時間以内に運動が組み合わさると症状が誘発される特殊なタイプに、「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」もあります。

蜂毒

スズメバチ、アシナガバチなどの蜂の毒液によるアレルギー反応。日本では、蜂刺されによるアナフィラキシーショックで年間20人ほどが亡くなっています。
薬物
原因となる薬物の多くは、ペニシリンなどの抗生物質、アスピリンなどの解熱鎮痛剤、抗てんかん薬の頻度が多く、また、検査に使われる造影剤、その他に、ワクチンや麻酔薬、輸血なども原因となりやすい傾向があります。

ラテックス(天然ゴム)
ラテックスはゴムノキの樹液に含まれる成分です。このため、天然ゴム製品に触れてアナフィラキシー反応が起こる場合があります。ラテックスは医療用手袋やカテーテルなどに使用されている他、風船や避妊具、ゴム靴、ゴム草履などの日用品に使われている場合もあります。
また、ラテックスアレルギーがあると、バナナ、アボカド、キウイなどにもアレルギーを起こす「ラテックス・フルーツ症候群」が知られています。
運動
まれに運動中、もしくは運動直後にアナフィラキシーを起こす場合があり、運動誘発性アナフィラキシーと呼ばれています。運動を中止することにより、症状がおさまることが多いといわれています。
その他
まれですが、クラゲなどの海洋生物による刺傷(ししょう)、ハムスター、ヘビ、ダニ、アリなどによる咬傷(こうしょう)、物理的刺激によるアナフィラキシーの報告もあります。また、原因の検査をしても特定できず、原因不明となる場合も少なくありません。



アナフィラキシーが起こったら

日頃からしっかり対策していても、誤食などにより、食物アレルギーの患者さんには思わぬときにアナフィラキシーが起こることがあります。もしものときに、落ち着いて素早い対処ができるよう、正しい知識でそなえましょう。
アナフィラキシーのお薬
アナフィラキシーの治療法は症状によってことなります。
軽い皮膚や粘膜症状の場合は抗ヒスタミン薬、呼吸器症状には気管支拡張薬、症状が重くなってくると経口副腎皮質ステロイド薬などの内服薬が用いられます。
ショック症状(ぐったり、意識障害、失禁など)やのどの強い症状(のどが締め付けられる感じ、声がれ、声が出ないなど)、呼吸器系の強い症状(強い喘鳴、呼吸困難など)があらわれた場合には、速やかにアドレナリン自己注射薬(アナフィラキシー補助治療剤)※を用います。
過去にアナフィラキシーショックを起こしたことがある、もしくは、起こす危険性があると思われる場合は、緊急時にそなえてアドレナリン自己注射薬を常に携帯しておくとよいでしょう。

処方には専門の医師の診断が必要です。2011年9月に保険適用となり、それまで自費扱いだったものが、健康保険による一部負担で処方を受けることができるようになりました。
緊急時に使用するものなので、日頃から正しい使用法をしっかり理解しておく心構えが必要です。万が一のときに、適切な対処法がとれるように相談しておきましょう。

? ※アドレナリン自己注射薬(アナフィラキシー補助治療剤)は、症状の進行を一時的に緩和させ、ショックを防ぐための薬です。
アナフィラキシーの症状が出たときの対処法
原因となった食物や蜂の毒針などをすぐに取り除きます。蜂の毒針は取り除けるようでしたら抜いてください。
食物の場合は、口の中に残っていれば、すぐに出して水でゆすぎます。原因となる食物が体に付着していたり、手でさわったりした場合は、水で洗い流してください。
蜂に刺されて毒針が残っている場合には、あまり無理をして取り除いたり、毒を出すためにつまんだりすると逆に、毒そのものや毒針、および細菌を体内に押し込んでしまう危険性があります。このような場合、直ちに最寄りの医療機関を受診し、医師による適切な処置・治療を受けるようにしてください。
アドレナリン自己注射薬を太もも前外側の筋肉に注射します
基本的には自分で注射しますが、患者さん自身が打てない場合は、救急救命士や学校・幼稚園、保育所の教職員が人命救助のために注射することも妨げられません。
あくまでもショック症状を一時的に緩和するための補助治療剤ですので、応急処置として使った後には一刻も早く病院を受診しましょう。
急に動かしたりはせず、安静な体位をとるようにしてください
あお向けで寝かせ、足を高くして楽な姿勢にします。嘔吐があった場合、顔を横に向けて、吐いたものをのどに詰まらせないようにしましょう。
いったんアナフィラキシーの症状が治まっても、時間をおいて再び症状があらわれる場合もあります。しばらくの間は注意深く状態を見守り、医師に相談をしましょう。
また、これらはアナフィラキシー時の初期対応の一部であって、実際には、症状の進行の早さや重症度に応じた対応が必要となります。
これだけわかっていれば大丈夫と気を抜かず、実際にアナフィラキシーが起こったときに適切な対応ができるように、普段からアドレナリン自己注射薬を使用するタイミングや使用方法などについても、主治医からしっかりと指導を受けておくことが大切です。

http://www.uro-gyn.net/hachi.html


(写真:全身にあらわれたアナフィラキシー)


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