演題名: 膀胱膣瘻における自験例19例のステージ分類
奥井伸雄12 斉藤恵介1 常盤紫野1 奥井真知子2 永榮美香 1 堀江重郎1
1)帝京大学泌尿器科教室 2)医)Uro-Gyn.netウロギネ・ネット
よこすか女性泌尿器科
一般抄録本文:
背景
膀胱膣瘻は、Waaldijk(1995)分類とGoh(2008)分類をつけるのが一般的である。発展途上国で死産・不衛生・低栄養・多産が原因で、10代、20代の膀胱膣瘻が急増しており、分類に当てはめての研究が進められている。
先進国では手術・感染・出産等が原因となり膀胱膣瘻が発生するとされるが、症例数が少なくこともあり、実態は不明である。我々は、2009年より本格的に膀胱膣瘻に取り組み、現在19例の調査をしている。自験例に分類を当てはめることで、本邦の特徴を検討したい。
対象と方法
Waaldijk分類は、TypeI II IIIにわける。TypeIがNormal urethra, TypeIIがClosing mechanism,
TypeIIIがmiscellaneous。TypeIIは、A(Nosub/Total urethra size),B(sub/total
urethara)及びa(Not circumferential
Scar),b(Circumferential)を確認する。Goh分類では、typeを1(>3.5cm)、2(2.5-3.5cm)、3(1.5<2.5cm)、4(<1.5cm)とし、瘻孔sizeをa(<1.5cm),b(1.5-3cm),c(>3cm)とし、瘻孔周囲scarをi(non/mid),ii(Mod/Severe),iii(Circumferential)と分類する。自験例19例について、WaaldijkとGoh分類を検討した。なお、ダブルファイバーシステム(膀胱ファイバースコープと膣ファイバースコープの同時施行)と膀胱造影CTのDICOM画像をOsiriXにて3Dボリュームレンダリング処理結果もあわせて紹介する。
結果と考察
自験例は、Waaldijk:TypeIIBaが多く、Goh:1ai,2ai,2ci等があり、すべて子宮か直腸手術後である。12例は、30から60歳までの女性である。特にmild-vagaina,Juxtra-cericalに多い。3例に尿管損傷があり、2例がすでに尿管植え替え手術後である。出産が原因となる例はなかった。5例において直腸膣ろうを発症していた。直腸膣ろうの患者は、全例子宮摘出の既往のある上に、腸閉塞手術後1例、C型肝炎1例、原因不明1例、TVM手術後感染1例(TVM手術後脳梗塞をおこし肺炎・腹膜炎繰り返す例)である。
考察
TypeIIBa 1ai,2ai,2ciであることは、子宮摘出手術中に瘻孔が出現し修復手術をおこなったことや、手術中の出血・感染などが原因と考える。mild-vagaina,Juxtra-cericalであるのは、子宮手術で剥離等の刺激を与える場所に相当する。出産が原因となった場合は、多くの海外報告では、この結果とはかなりことなる。これらのことから我々の経験した症例では
『手術侵襲』が中心的な原因と考える。
我々グループは、何度修復しても治癒しない難治性の膀胱膣ろうの発生原因として、『骨盤内に異常なテンションが、手術侵襲によりおこるため』という仮説を考えて、現在手術に取り組んでいる。この点から、膀胱膣ろうの世界的分類を当てはめることで、我が国の原因が『手術侵襲』が中心的であるとわかることは、仮説を裏付ける一つの根拠となるであろう。