奥井識仁おすすめ 黒澤明映画

アングル・衣装などを写実的に描いた絵コンテ
黒澤監督は、『影武者』の構想をはじめて、絵コンテを数多くのこしている。これらは、もし『影武者』が実現できなかったときに、せめて作品を絵でのこしておきたいという思いから書いた細かいもので、映画のシーンのすべてがよみがえるような作品。

この絵コンテは、影武者が側室に対面したときのものである。影武者のこのシーンでは、当初、勝新太郎を起用していたために、絵コンテもそれを意識したのになっている。
黒澤明監督は、画家志望であった。このために、絵は独創的で味わい深い。

世界の一流監督が教科書にした『七人の侍』
昭和29年に発表されたこの作品は、現代映画の金字塔である。リアリズムに人間をえがいたもので、ストーリーは御存じのとおり明快で、わかりやすい。貧しい村の百姓たちが、サムライをやとって、略奪の限りをつくす野武士を追い払うというものである。『映画は、時間の芸術である。そして、時とは、物事の運動の外にほかならない。運動するものが存在せねば、対象を時はないのである』(黒澤ノート)


黒澤監督は、わかい時代にドフトエスキーをこのんだ。『仁』『愛』『自己犠牲』が、融合して彼の愛の思想として形成されている。『それぞれの個性がなくてはいけないし、おもしろい性格をもってなくてはいけないし、全体で一つの力になるように、コンビネーションがうなく行かなくてはならない』と語っている。

人間の尊厳をみつめた傑作『赤ひげ』
赤ひげとあだ名される医師が三船敏郎。そこにやってきた青年医師が加山雄三。山本周五郎の名作を映画化した快作である。ラストシーンで加山雄三ふんする青年医師は、お目見え医師に召抱えられるをことわり、小石川診療所にのこる。それは、三船敏郎ふんする赤ひげのヒューマニティに打たれての決意である。


心をやんだ少女を演じた二木てるみは、当時14歳。大女優杉村春子が、悪役を演じきっている。

マクベスの新解釈を、ローレンス・オリビエも感動した快作『蜘蛛の巣城』
シェイクスピアのマクベスを、ここまで日本的に解釈したあたらしいこころみです。

はなしは、マクベスたちが占い師にであうころからはじまります。ここは、シェイクスピアそのものです。マクベスに能の要素をとりこみました。シェイクスピアとちがうのは、マクベス夫人が妊娠するが死産であったというアイデア。ローレンスオリビエに、『使ってもいいですか?』と聞かれたアイデアです。

注目すべきは、この甲冑で、これは黒澤監督自ら、サムライの足がながくみえるように工夫をしたのだそうです。富士山二合目にふくられたリアルな蜘蛛の巣城で話がすすみます。




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